神戸からオールブラックスへ - デイブ・レニー


2026年7月20日

ネーションズチャンピオンシップのサウスシリーズが終了しました。デイブ・レニーさんをHCに迎えたオールブラックス(ABs)はここまで3戦全勝です。この3試合を見る限りでは、個人的にこれまでのABsとの違いがいくつか見えてきています。



まず感じるのは、「才能任せ」から「構造で勝つ」ラグビーへ変貌しつつあるところです。かつてのABsは、「個の才能で局面を打開する」という色が非常に濃いチームでした。しかしレニーさんはチーフス、グラスゴー、神戸でも一貫して

・システム
・役割分担
・規律

を非常に重視する監督だと感じています。そのため現在のABsも

・無理なオフロードが減った
・サポートプレーヤーが早い
・ブレイクダウンで孤立しない
・キックの目的が明確

という、「勝つための構造」がかなり整理されています。これはイタリア戦、アイルランド戦とも共通して見られました。



そしてエリアマネジメントも劇的に改善された印象です。

以前のABsなら「そこからでも攻めるの?」という場面が少なくありませんでした。しかし現在は

・自陣ではしっかり蹴る
・相手陣でプレッシャーを掛ける
・キックチェイスを徹底する

という南アフリカやアイルランドに近い考え方になっています。つまり「走れるから走る」ではなく「走るべき時だけ走る」というラグビーになっている印象です。これは非常に現代的です。



あとはやはり、「神戸のラグビーに似てるな」とも感じました。「フィジカルの主導権(ゲインラインの突破)」「マルチフェーズ(継続性)」「キャプテンによる体現」という3つの明確な共通点があると思います。

1. 縦へのフィジカルバトルと「コンフォートゾーン」の破壊

レニーさんのラグビーは、派手な展開力に目が奪われがちですが、根底にあるのは屈強なFWDによる縦への力強いキャリーです。

・神戸での戦い方: 激しいコンタクトでゲインラインを割り、相手のディフェンス陣形を崩すことを徹底しました。

・ABsでの体現: アイルランド戦前にレニーさんが語った「すべての場面で外へ展開するのではなく、相手の真ん中を突き、コンフォートゾーン(相手ディフェンスにとって、予測がつき、心理的にも体力的にも無理なく守れている状態)から引きずり出す」という言葉通り、大型FWDを前面に押し出して中央を破る直進的なアタックを披露しました。

2. ボールを保持し続ける「マルチフェーズ」の意識

両チームとも、キックに頼りすぎず自らボールをキープして攻め続けることを理想としています。

・神戸での戦い方: 徹底したブレイクダウンのクオリティをベースに、何十フェーズもアタックを継続するスタイルを確立しました。

・ABsでの体現: 3連勝を飾った本シリーズでは、試合を重ねるごとにボールセキュリティが向上しました。指揮官自ら「マルチフェーズを重ねて利益(トライ)を得るゲームバランスが良くなった」と手応えを語っています。

3. 主将アーディ・サヴェアという「最大の共通項」

戦術だけでなく、それをピッチで引っ張る中心人物が同一であることも共通点です。

レニーさんはABsの新たなキャプテンに、神戸でも大活躍したアーディ・サヴェアを指名しました。サヴェアは圧倒的なワークレートと、泥臭いブレイクダウンでのハードワークを自ら体現する選手です。彼がチームの核にいるからこそ、レニーさんの求める「タフでハードなラグビー」がどちらのチームでも一貫して機能しています。

このように、レニーさんは神戸で培った「泥臭いフィジカルの強さ」と「ボールを動かし続けるスタミナ」を、新生ABsの土台として見事に移植させつつあると思います。



今夏、ABsには、最大のライバルである南アフリカとの4連戦「Rugby’s Greatest Rivalry」が待ち受けています。南アフリカもネーションズチャンピオンシップでは、まるで自然現象のごとく3連勝を飾りました。意地とプライドが激突する白熱したシリーズになりそうで、今から楽しみです。