日本の命運を握る男 - 李 承信


2025年11月6日

エディが就任してから(良いか悪いかは置いといて)李がSOを任されています。特に今年のテストマッチでは全8試合先発で、先のボクス戦以外はフル出場を果たしています。日本はPNCのトンガ戦までは4勝1敗でした。ただその後のフィジー、ワラビーズ、ボクスの強豪国との対戦で3連敗を喫しました。攻撃陣が奮わなかった印象です。その一端はやはり司令塔にあったのではないかと思い、昨日、一昨日とワラビーズ、ボクス戦を、特に李の動きに注意して、何度も巻き戻しながら観てみました。

SOの優劣は中々数値には表せないので、以下はあくまで個人的な印象に過ぎませんが、分析と言うか感想を書いてみました。もしご興味あればご覧ください。



◆ 優秀なスタンドオフの条件

個人的にSOに求めたい資質は以下の5点です。

①ゲームコントロール能力(試合全体のリズムと方向を操る力)
②状況判断と意思決定の速さ(守備の動きを一瞬で読み、最適解を選ぶ)
③戦術キックの精度とバリエーション(陣地獲得・プレッシャー緩和)
④ラインを動かす指揮力と声の質(味方を動かす統率)
⑤フィジカルとディフェンス対応力(狙われても耐えられる強さ)



◆ 李に足りなかった(あるいは出せなかった)ように観えた要素

① 試合のテンポを再構築する力

ワラビーズ・ボクス戦ともに、ブレイクダウンでボールが遅くなり、日本の攻撃テンポが崩れた際、李が「テンポを再設定」できなかった点が目立ちました。優秀なSOは、テンポが落ちてもキックやショートサイド攻撃で相手DFのリズムを壊す手を打ちます。李はプレースタイル的に「速いテンポでの連続攻撃」に強みがありますが、流れを変える発想が乏しく、相手に試合を支配され続けた印象です。

② 立体的な視野とディフェンス誘導の使い方

ワラビーズやボクスのような前線プレッシャーが強い相手には、DFライン裏のスペースを突くキックや、内側ランナーを使った「奥行きある展開」が重要です。李はパス・ラン・キックの選択肢こそ持っていますが、プレー前の相手を操るフェイントが少ない印象です。たとえば、ディフェンスを一歩でも内に引きつけて外を活かす、キックを匂わせて裏を刺す--そうした駆け引きがまだ浅い印象でした。結果、相手DFが常に一歩前で潰せる構造になっていたように見えました。

③ キックの「戦術的意図」の薄さ

戦術キック自体の精度は悪くありませんが、「なぜその場面で蹴るのか」という文脈の明確さが欠けていました。
・味方のチェイスが間に合わないタイミングでのハイパント
・陣地を稼ぐだけでプレッシャーを与えないキック
こうした場面が多く、ワラビーズやボクスののバックスリーに余裕を与えるキックになっていました。結果、相手のカウンターの起点を作ってしまいました。

④ コミュニケーションの主導権

(これは定かではありませんが)李が攻撃コールの中心のように感じましたが、FWDとのリンクやインサイドセンター(特にディラン・ライリー)との意思統一が不十分に見えました。SOが声でFWDに「今は蹴らない」「速いボールで繋ぐ」と明確に伝えられないと、ハーフやCTBの判断がずれ、全体の流れがちぐはぐになります。ボクス戦ではまさにその「指揮系統の途切れ」が顕著だったように見えました。

⑤ フィジカル耐性と心理的余裕

両試合で相手に徹底的にSOチャネルを狙われました。李はタックルにも積極的ですが、身体をぶつけられ続けると判断精度が落ちる傾向があるように感じます。一流SO(例:ポラード、ラッセル、セクストン)は、接触後も冷静に次の一手を描きますが、李はそこで少しプレーが単調になり、経験と耐性の差が出た部分だと思います。



李は、スピードとスキルに優れたSOであり、テンポの速い展開ラグビーでは輝けます。しかし、世界トップ相手に求められるのは、「テンポを作る」だけでなく「流れを変える」「相手を操る」SOだと思います。この2試合では、攻撃のリズムを修正する手段、相手の出足を鈍らせる駆け引き、チーム全体を束ねるリーダーシップの3点が不足していたように感じました。

週末のアイルランド戦、個人的にはその辺りが如何に修正されてるかに注目して観るつもりです。エディがHCでいる限り、李はSOで使い続けられるでしょう。李は24歳、まだまだ伸びしろは沢山あります。個人的には厳しい目は無くさずに、今後も注目、応援していきたいです。