天使と悪魔の会話 - 日本代表編


2024年7月23日

悪魔「もうエディはクビにした方がいいんじゃね?」

天使「ちょっと悪魔さん、なんてことおっしゃるんですか」

悪魔「だって全然結果出てねぇじゃねぇか」

天使「悪魔さん、何も分かってらっしゃいませんね。今は2027年に向けて、若手に経験を積ませてる段階なんです。結論を急ぎすぎです。もう少し猶予を与えても良いんじゃないでしょうか」

悪魔「エディはイングランドをクビになって、ワラビーズをW杯で初めて予選リーグ敗退させた男だぜ。それもこれもチームの若返りを急ぎ過ぎたせいなんだよ」

天使「それはW杯直前の話だったからですよ。今はまだ2027年まで時間がありますから。エディさんのチーム作りは間違ってないと思います」

悪魔「なんでもかんでも『3年後』とか『将来性』を盾に敗戦を正当化するの止めてくんねぇかな。W杯にフォーカスしてるから今は負けてもいいなんてチームが、W杯で勝てる訳ないだろ。そもそも練習の為の試合だなんて考えは、相手国にも失礼だろ」

天使「じゃあ言いますけど、2015年までティア1にも勝ったことも無い、アイランダーにもボコボコにやられてた弱い日本を、普通数十年かかるところ、たった数年で変えてくれたのが、他ならぬエディさんじゃないですか。確かに就任当初の2012年はPNCで全敗し、観光気分でやってきたフレンチバーバリアンズにも惨敗しましたよ。ただそこからGPSやドローンなどのハイテク機器を初めて日本に導入し、立体的な数値を元に、厳しい練習を積み上げ、選手の意識も改革させ、ウェールズに勝ち、イタリアにも勝ち、最後南アフリカにも勝ったじゃないですか。それがチームにウィニングカルチャーを植え付け、2019年のベスト8にも繋がったんじゃないですか。悪魔さんも、観戦歴だけは長いんだから、それくらいお分かりでしょ」

悪魔「なんだよ『観戦歴だけは長い』って」

天使「すみません。口が滑りました(笑)」

悪魔「オレが言いたいのは、世代交代のやり方の話なんだよ。勿論目標はW杯だけど、テストマッチ=練習試合じゃなくて、テストマッチ=公式戦なんだよ。試合結果はずっと歴史にも残るんだよ。負けたらランキングポイントも下がるし、それこそ2026年の時点で12位以内に入ってないとW杯のプール分けで不利な振り分けされるんだぞ。」

天使「じゃあどうすれば良かったんですか?」

悪魔「そもそも世代交代っていうのは若手がベテランからレギュラーを奪う事だろ。実力が同じくらいなら今後の伸びしろを考えて若手を使うべきだけど、その時点で実力が劣っている若手を起用し続けるのは違うだろ。そもそも経験が少ない選手同士が集まってもなかなかプラスに働かないだろ。経験もスキルもあるベテランと一緒にやることで若手のスタンダードが上がっていくんだよ。少しずつグラデーションで世代交代させるのが自然だろ」

天使「おっしゃりたい事はわかりますけど、そうもいかない事情もあったと思います。怪我やコンディション調整やご家庭の事情で、稲垣さんや姫野さんやコーネルセンさん、そして松島さん達がいらっしゃったら、結果も違ってたと思います。それに現時点のベストメンバーが3年後もピークでいられるかと思うと難しい面もあると思いますし。ガンターさんだって直前に怪我しましたからね」

悪魔「ガンター、オレも好きなんだよね。観たかったな~...はっ、いやいやオレだってイングランドやイタリアに勝てるとは思ってねぇよ。ただ負け方が悪すぎるだろって話。このシリーズを通して何か収穫はあったのかよ」

天使「たくさんあったと思いますよ。原田さん、為房さん、岡部さん、桑野さん、コストリーさん、小山さん、藤原さん、トゥイさんらキャップの少ない選手達が世界レベルの試合を経験できたことは大きな収穫だと思いますよ。なにより矢崎さん。悔しい思いも沢山したと思いますが、若い矢崎さんにとっては2027年に繋がる大きな財産になったと思いますよ。」

悪魔「まぁ経験だけじゃメシは食えねぇけどな」

天使「何よりこの時期にイタリアと戦えたことは今後の日本代表にとってもの凄くプラスになったと思いますよ」

悪魔「どういうことだよ」

天使「イタリアの戦術ですよ。FWDが身体を張ったDFで接点に圧力を掛け、相手の球出しを遅らせ、上手くいけば反則も誘う。反則を貰ったら、ゴールまで50~60m圏内であれば確実にPGを決める。そして自陣からはロングキック、蹴り合いになってもキックの飛距離と正確性で確実にエリアを獲得していく。相手の守備が少しでも乱れるようであればカウンターアタックでパスを繋ぎ、少ないフェイズでトライする。中盤からはハイパント、相手が取れば接点に重圧を掛け反則を誘いPGを狙う。マイボールになってゲインを切れば必ずボールキャリアーを数名の選手がフォローしてトライを目指す。こういう仕事を選手全員が一貫性を持って愚直に遂行してました。イタリアってそんなに突出した選手が沢山いる訳ではないですし、シックスネーションズでもずっと最下位でお荷物扱いされてましたけど、チーム戦術を持って全員でハードワークすることで、今や立派なティア1国です。日本が今後目指すべきってイタリアのラグビーなんじゃないでしょうか。それを身をもって体験できたことって、もの凄く大きな収穫だと思います」

悪魔「お前、結構詳しいな...まぁそれくらいはオレも分かってたけどな」

天使「ふふふ(笑)」

悪魔「でもそれもこれも1番重要なのはフィジカルだろ。日本はリーグワンだけやってりゃいいのかよ」

天使「それは私も危惧しています。ただ、盛り上がってる今のリーグワンの仕組みを無くすわけにもいかないですし、サンウルブズを作り直すわけにも行かないですよね。これはエディさんだけでなく協会と一体となった育成スケジュールの作成や更なるテストマッチの増加が喫緊の課題でもありますね」

悪魔「だよな...今日初めて意見があったな」

天使「そもそも悪魔さん、奥様に『ずっと日本を応援する』っておっしゃったんでしょ」

悪魔「まあな...ていうかお前とオレは表裏一体なんだから、お前の奥さんでもあるんだろ?」

天使「ワタシは女性の設定なので」

悪魔「何だよ、設定って」

天使「あっ(笑)...ともかくPNCには期待しましょう。少し時間もあるし、選手の危機感も変わるでしょうし、メンバーも変わるかもしれませんし。今シリーズの反省をふまえて、きっと見違えるような試合をしてくれると思いますよ」

悪魔「お前ってヤツはどこまでもポジティブなヤツだな」

天使「一緒に応援しましょう」

悪魔「...おう」

めでたし、めでたし??